東京工業大学 Tokyo Institute of Technology
工学院機械系 Graduate School of Engineering, Depatrment of Mechanical Engineering
ライフエンジニアリングコース Human Centered Science and Biomedical Engineering Graduate Major

八木研究室 Yagi Laboratory

退職された清水先生の研究

キリンの呼吸パラメータの非接触計測法の開発

肺は体内におけるガス交換を行う役割を有し、換気、すなわち二酸化炭素を血液中から除去し酸素を血液中に付加することが行われている。換気の観点から、肺は実際にガス交換が行われる肺胞と、換気には関与しないdead volumeの2つに区分される。ヒトの場合、1回換気量は常にdead volumeを下回っており、酸素が肺胞領域に到達せず、正常な換気が維持できないと考えられるものの、実際は管内において振動流により見かけ上中心軸方向拡散が飛躍的に増進される。この原理はすでに医工学の分野で利用されており、とりわけ人工呼吸器では高頻度振動換気法と呼ばれて活用されている。

キリンは、一回換気量に対するdead volumeの割合が最も大きく、その換気メカニズムは非常に興味深い。これまでは拘束したキリンに直接マスクをつけ、呼吸頻度、一回換気量、呼吸流量などを計測した例がある。しかし、キリンは草食動物であり、極端にデリケートな性質であるため、拘束したりマスクを装着したりした状態では、自然な状態における値とは異なる値が計測されている可能性が高い。そこで本研究では、非接触でキリンの呼吸を計測する方法を確立することを目指す。

キリンの動画をご覧いただきたい(wmv形式 約2MB)。キリン腹部に注目すると、呼吸に同期して腹部が収縮していることが確認できる。本研究では、キリン腹部の収縮を利用し、キリンの呼吸パラメータが求められないかと考えた。その際、キリン腹部の収縮に伴い腹部模様の面積が変化することに着目し、キリン腹部をモデル化することにより、面積変化から呼吸流量を換算することを試みた。まず、腹部における部位に応じて斑点面積の変化率が異なるので、その変化率の大きさに関して3段階に区分した。図1にその例を示す。青、黄、赤となるにしたがって変化率が大きくなる。

Macula Number
図1.キリンの斑点とその収縮による色分け

特に変化率の大きい斑点15、 20、 23、 25、 26における面積変化を図2に、図3にそれらを元に換算した呼吸量波形を示す。この結果より、キリンの呼吸数は10 (breaths/min)、1回換気量は約27 (l)と求められた。今後さらに計測数を増やし、詳細を検討する予定である。

Area Graph
図2.各斑点の面積変化
Aspiration Graph
図3.呼吸量波形

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